SST PURE (puring process)
アメリカの PGA ツアーの練習場の側には 必ず 各メーカーのトレーラーが駐車していて選手のクラブの調整が何時でも出来るような体制が取られています。
その中に何時もあるのが PURE という文字の入った SST PURE というシャフトの歪の調整を行う専門会社のトレーラー。 この PURE という言葉は 既に ゴルフ用語化していて pured shaft(ピュアド・シャフト)とか puring process(ピュアリング・プロセス)などといった使われ方をするようになっています。 後述しますが、日本でも耳にするスパイン調整、スパイン・アライメントの進化版といっても過言ではありません。
程度の差こそあれ、一本、一本のシャフトには 対称性 (特に、その肉厚の均一性や曲げ応力に対する強度) といった観点からの歪が 必ず あるのですが、そうした歪のあるシャフトを無造作に使用すると スイング時のクラブフェースの向きや軌道に大きな影響を与え兼ねず、安定性を欠くクラブになってしまう可能性が高くなります。 特に、歪の大きさは カーボン・グラファイト ・シャフトの場合に 大きくなる傾向があり、そうしたシャフトに歪の影響が大きくなるような角度でクラブヘッドを装着してしまうと 歪のスイングとショットに与える影響は 大きくなってしまう訳です。
しかし、そうしたシャフトでも 歪に対してある一定方向にクラブヘッドを装着すれば 歪の影響はほとんどなくなるということに着目したのがシャフトのピュアリング。 つまり、シャフトをどういう向きで取り付ければ良いのかをチェックするプロセス、または、シャフトの芯出しのような調整作業がピュアリング・プロセスなのです。 スパイン調整、スパイン・アライメントは、シャフトの節(スパイン)を見つけ、9時(ターゲット方向)を指すようにクラブ組んでやるというのが定説ですが、ピュアリングはあくまでシャフトの振れ方を調整する技術です。
クラブフェースが垂直になるようにグリップエンドを固定してクラブを横方向に振動させた時に その振動が左右に動き続ければ、シャフトの取り付け角度が正しい クラブということになるのですが、その左右の動きがすぐに暴れ出すような場合は、正しい角度でシャフトが装着されていないことになります。 そうした現象を利用して、クラブの挙動を計測機器を使って見ながら正しい装着角度をチェックするのがピュアリング・プロセスです。
しかし、ピュアリングをして正しいシャフトの取り付けを行うプロセスは、比較的時間のかかるプロセスなので、どのメーカーもコストのことを考えて、市販のクラブではそうしたことはしていないのが実情です。 また、一部のシャフトを除き、シャフトのロゴは、こうした歪をチェックした後に正しい向きでシャフトが装着されるように印刷されていないと考えた方が良いでしょう。
つまり、市販されているクラブは、たまたま良い角度でシャフトが取り付けられているものもあれば、そうでないものもあり、歪の特性とは無関係に印刷されたロゴが上、または、下に来るように装着されていると考えて間違いないでしょう。 そして、多くのクラブは シャフトの歪の影響がまったく考慮されないまま装着されているクラブだということです。 そして、その影響は取り付けられる角度によって様々ですから、シャフトの歪の影響はクラブによってまちまちという訳です。
欧米ではSST PURE 社のピュアリングの技術の下にそうした高度なシャフトの取り付けを行っている専門店もあります。 日本でも 振動計でクラブの挙動を見てシャフトを取り付けてくれるお店もありますが、計測機器を使った高度な技術を採用した一般消費者向けの SST PURE の手法は まだ 普及していないというのが実情です。
リシャフト時には 振動計でクラブの挙動をチェックしながら装着してくれるようなお店を選びたいものですが、その結果として、ロゴがおかしな方向を向いたのであれば、逆に、クラブのことを良く知っているプロのクラフトマンの仕事だということになるのです。